冬の訪れは あなたに電話をかけたときの
吐く息の白さ
あした東京へ行くよ
銀座線のラッシュ・アワーで
混み合う人のリズムについて行けず
もう少しで 満員電車に私を置き忘れそうになった
あなた
ひさしぶりに会ったあなたは
元気にメンソールの煙草をふかしている
雪国生まれなのに ずいぶん黒くなったのね
新しい物に目がないあなただから
私の知っているあなたは
本一冊読まなかったのに
あなたの部屋を訪ねたら
ロック・マガジンとアーティスト詩集が
テーブルの上に積み上げてあった
あの日朝露が降りた校庭を
あなたと運動靴が濡れるのも忘れて歩いた
あの日2時間も授業がはじまるまで
誰もいない教室 2人きりで
夢ばかり見てた
原宿で人ごみにもまれながら
あなたにさよならをした
「元気でいてね」
あなたは先に踵を返し
私は雑踏の中に消えて行くあなたを見送る
同じ格好をした男の子たちとあなたが一緒になる
突然 淋しくなって 大声であなたの名前を呼ぶ
みんな一斉に振り向く
みんな一人一人顔が違うことに安心して
あなたの優しい笑顔を見つけて
そして さよなら…
東京の空が高くなりはじめた朝
私は この街を出る